『砂糖をやめればうつにならない』(生田哲、角川書店)を読みました。
とても面白い本でした。
本書は、「低血糖症」という血糖値が低いときに現れる症状がうつに似ていることから、このタイトルがつけられています。
なので、うつの本ではなく、血糖値に関する本です。
低血糖症の症状は、神経質、イライラ、気分の変動、疲労感、震え、フラフラ、うつ、冷や汗、めまい、眠気、頭痛、胃腸障害、忘れやすい、不眠、不安、頭の混乱、ドキドキなどで、このどれもがうつの症状と共通しています(※図表3)。 もしあなたが、うつの原因が低血糖症であると疑いを持ったならば、砂糖やクイックカーボを避け、スローカーボ中心の食事にしてください。うつの原因となっていた低血糖症が改善されるから、うつから脱却できるでしょう。
砂糖をやめればうつにならない P.104
低血糖症になるメカニズム
では、どうして砂糖を摂ると低血糖症となるのでしょうか。
砂糖などの精製された炭水化物(悪いカーボと呼ばれる)は、血糖値を急激に上昇させます。
するとインスリンが出て、血糖値を急激に下げます。
これによって低血糖症が引き起こされます。
インスリンは細胞に糖分を取り込ませる役割があるため、この糖分が脂質として保管され、肥満にも繋がります。
そのため生活の中から「クイックカーボ」(血糖値を急上昇させる炭水化物。悪いカーボとも呼ぶ)を除くことが大事、というのが本書の趣意となります。
対策例
では、どのようにして低血糖症の対策をすればいいのでしょうか。
本書では、
- 精製された炭水化物を控える(例:パン、白米、パスタ、クッキー、チョコレート)
- 食物繊維を摂り、タンパク質と脂質をバランスよく
- ナッツ(脂質、ビタミン、ミネラル)とフルーツ(ビタミン、食物繊維)も摂り入れる
- セロトニンを作るためのトリプトファンを摂る(例:アーモンド)
といった対策が紹介されていました。
ちなみに、アメリカでは50%近い人が低血糖症に該当するかも知れないのだとか。
決して珍しい症状ではなく、食の近代化、グローバリゼーションによって、世界各地でとても身近な症状となっていると思われますが、病気とは認められにくいため、誤診されるケースも多いそうです。
アルコール依存症と低血糖症
お酒も低血糖症に繋がるということも紹介されていて、アルコール依存症気味だった私は大変驚きました。
甘いものを大量に食べるだけが低血糖症を引き起こす、あるいは低血糖症を悪化させる原因ではありません。アルコール依存者が飲酒をやめると、何かに取り 憑かれたかのごとく甘いものを求めます。
そうです。多くのアルコール依存者は、低血糖症なのです。
砂糖をやめればうつにならない P.191
1950年代に、ホルモン研究のパイオニアであるジョン・ティンテラ博士は、アルコール依存症から回復し、長年にわたって 素面 で生活する人でさえ低血糖症に苦しむことを報告しているのです。
だから、アルコール依存症を効果的に治療するには、食事をコントロールすることに焦点を合わせなければなりません。すなわち、砂糖やクイックカーボを食事から完全に取り除かねばならないのです。
砂糖をやめればうつにならない P.192
確かに私は夕方以降に甘いものを食べると、1時間後くらいにとても気分が悪くなっていたのですが、アルコールからくる低血糖症にかかっていたのかも知れません。
本書ではコーヒーもカフェインが腎臓を刺激してアドレナリンを出すことで血糖値を上昇させるとありますが、確かに上記の甘いものとコーヒーを合わせると、嘔吐しかねないほどのムカムカを感じていました。
逆流性の胃腸炎かなと思っていたのですが、低血糖症の可能性が浮かんできて驚いています。
そして、確かに今私は断酒をしていますが、夜になるととても甘いものが欲しくなり、時々はどか食いをしてしまいます。
これもまたお酒のせいだったとは、目からウロコでした(ウロコが落ちても、甘いものをやめられてませんが…)。
その他面白かった点
- ニキビは西洋文明病
- 悪いカーボは活性酸素を生み出し、老化を促進する→抗酸化作用のあるビタミンA、C、Eを摂る
- うつ症状は甘いものの摂取量と関連しており、ニュージーランドでは6人に1人がうつ症状を訴えている(ニュージーランドは一人当たり一日に125グラムの砂糖を消費している)
- 糖尿病患者はうつになりやすく、糖尿病でなくてもインスリンの効き目が低下した(インスリン抵抗性という)人は、うつになりやすい
- スナックをチーズと一緒に食べると満腹感の持続時間が伸びる
まとめ
現代においては、多くの地域において飢餓ではなく、肥満が増加していることが問題になっています。
そしてその原因が血糖値を急上昇させる炭水化物にあります。
この炭水化物による血糖値の上昇によって、肥満だけでなく、メンタル面での不調も引き起こされるというのが、本書が鳴らす警鐘です。
これだけ精製・加工された食品が多く出回る世の中で、100%昔のような未精製・未加工の食品を摂るというのは難しいかも知れませんが、それに向けた努力をし、お金をかける価値はありそうだと私は思いました。
ということで、私はまずナッツとチーズを買うところから始めました。
みなさんもぜひ本書を参考に頂き、快適な生活を送るために食生活を見直して見ていただけるといいかも知れません。
砂糖だけでなく、脂質と塩を含んだこの3種の神器が私たちの食欲センサーをぶっ壊します。
この3種の神器がなぜこれほどまでに現代社会で猛威を振るっているのか、そしてそれにどうしたら私たちは抗えるのかをまとめたのが『フードトラップ』(マイケル・モス、日経BP)という本です。
ただ、『フードトラップ』はとても重厚な本なのと、経済優先社会という側面からもアプローチした本なので、サクッと栄養的なエッセンスを知りたい方には『砂糖・脂肪・塩などにひそむ加工食品の罠・フードトラップ』(吉川豊、ヘルスケア研究所)がおすすめです。
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